^u^の備忘録

備忘録 印象深い日々の出来事や、気付き等を記す

本の感想「心は孤独な数学者」

・あらすじ
3名の歴史に名を刻む天才数学者たちの半生を作者・藤原正彦目線で描いた作品。
彼らの幼少時代や、数学の道を歩むきっかけ、そして数学者としての栄光、その後の挫折…。

・感想
単純に「天才たちはやっぱり変態だな」と面白可笑しく読み進めることもできるし
彼らが生きた国、文化といった背景に注目してみるのも面白い。
また、登場人物たちの数学者としては一流でも、その他の面では少々問題アリな人柄も愛らしく感じられる。多分この原因は作者の藤原さんが、数学者のことを心から尊敬し、愛しているから、私たちも数学者の至らない面の描写を肯定的に捉えてしまうのだと思う。

・気になったこと
ラマヌジャンの天才ぷり
ラマヌジャンについては、、、どこまでが本当なの?と気になってしょうがない。
彼は独学で数学を学び、どんどん新しい公式を思い付くが、その証明はできなかった、と描かれているけれど
そんな人本当にいるのか?
天才として世間から認知されるためのラマヌジャンのイメージ戦略だったのでは??
と疑ってしまう。
当時のインドは数学者に恵まれない環境であり、そこから脱出し欧米に進出するためにはコネと金が必要で、それらを手に入れるために、より周りに注目される方法として、イメージ戦略を打ったのでは?と。
それとも、凡人の私には想像できないが、天才とはそういうものなのか…
数学者に詳しい方に、ご教示いただきたい。

本の感想「落日燃ゆ」

○あらすじ

終戦時に首相を担い、戦後の東京裁判A級戦犯として絞首刑に処された、広田弘毅の生涯を描いた本。

広田家族の強い絆、広田の「自ら計らわず」の思想といった広田の描写はもちろん

日本が何故暴走し、開戦に至ってしまったかを軍部・政治家・官僚・天皇を取り巻く情勢と彼ら自身の生き方、また各国の大使の目線も含め描かれる。

作者は城山三郎で1927年生まれ。第二次世界大戦を経験。現在もご存命。

 

○感想

<1つ目>

幼稚な感想だけど、「登場人物が死にすぎる」ことが衝撃だった。

広田の母、息子は自殺。

広田の妻静子は、裁判中の夫を想い自殺する。

軍部内の統制がとれず、反乱分子が政治家を殺す。

広田自身も、いつ死んでもよい覚悟を決めたうえで外相に着任している。

他にも、あまりに人々が自殺。他殺されていく。直接的な戦禍による死でなく。

人が持つ 死への恐怖が時代によって大小することは無いだろうに、何故そんなに死への躊躇いが無いのか、不思議に思いながら読み進めていた。

 

<2つ目>

日本は無宗教と言われるけど、戦時下の日本は「日本万歳教」信徒による宗教国家だったのではないかと思われるほど

非合理的、非人道的な行動をとっていることに驚いた。

 

もちろん、歴史はそれを紡ぐ人の思想を反映して編集されているので、この本に書かれている有様が事実そのものではないと分かっているし

特に敗戦国の日本を肯定する向きの歴史は戦勝国によって淘汰されると思うけれど

それにしても、本の中で描かれた、世界に向けて日本のとった行動は異常に映った。

 

現在の日本は、逆に”「日本国民」であることに誇りを持っているなんて恥ずかしい”というような、

日本のことは好きだけど、別に「国家のために」とか「(日本人として)私は…」といった国家への意識が高い考えは持っていない、という人が大半だと思う。

 

この違いは、国力の向上とともに生活水準が上がり、豊かな暮らしが実現され、他国との競争を一般市民が意識しなくてもよくなったからだろうか。いわゆる平和ボケ…?

もしくは、GHQの教育改革によって子どもへの教育内容が変わったため、私たちの思想も変化したからだろうか。

 

全然知識が足りていないため、推測しても恐らく的外れなことしか検討できない…

この疑問は別の書籍読み、解決のヒントを得たい。

本の感想「僕に踏まれた町と僕が踏まれた町」

○本との出会い

「ガダルの豚」を読み、あまりの面白さにamazonレビューを読んでいた所、著者の中島らもさんには熱狂的なファンが多いことが分かった。

私もだんだんとらもさんに興味がわき、ついにらもさんの自伝であるこの本の購入に至った。

 

○内容

らもさんの学生時代~アル中になって死にかけるまでの半生が、おもしろおかしく描かれている。間違いなく話を盛っていると思う。

それほどまでに、波乱万丈で行き当たりばったりな人生を歩んでいる。

 

○特に印象的だった箇所

<1つ目>

本格的なヤク中・アル中な点。わたしの価値観で表現するならば、クズ という言葉がぴったりではと思う。

それほどのダメ人間ぶりを赤裸々に綴っている。

にも関わらず、めちゃくちゃ面白い本を書くため、ダメな点も愛らしく見えてしまう。

まるで、ヤンキーが電車で席を譲るのを見かけたときの感情のゆらぎのようなものを与えてくれる。


<2つ目>

大阪の一昔前の高校生の姿にカルチャーショックを受けた点。

この違いが地域性によるものなのか、世代によるものなのかは分からないけど

天下の灘高の生徒が学校内でヤクをきめている日常なんて、信じたくない。


○まとめ

ぱぱっと流し読みし、クスクス笑ったり青春時代を懐かしむことに適した本であり、頭を悩ませることもない。

らもさんが好きな人にはぴったりの本、らもさんに興味がない人には他の本を薦めたくなる、そんな本だと思う。


本の感想「官僚たちの夏」

○本との出会い

バイト先のカフェのオーナーに著者の城山三郎さんの本を勧められ、たまたまカフェの本棚に2冊も同じ本があったため、お借りすることができた。

やけに城山三郎さんを推すなと思って著者紹介に目を通したら、オーナーと同じ一橋大出身だった。オーナーの愛校心はものすごく強い。やっぱりな…

 

○本の内容

通産省に務める官僚たちの働きざまを、作品中次官にまで上り詰める主人公・風越シンゴを中心に描く。

登場人物の仕事に対する意識のぶつかり合いや、同僚や大臣、財界等周りとの駆け引きなど詳細に見ることができ、

高度経済成長期における日本を支え導こうとするリーダーたちの思いに少し触れることができる。

 

○感想

<1つ目>

この本の本旨からはズレるけれど、日本の自動車産業保護貿易について知れた、よい機会であったと思う。

競争力をもたない日本の自動車産業が今や世界のトップに君臨するまでには、諸外国からの批判を浴びながらも交渉を重ね、自由化から防ぎ、産業を成長させた立役者たちに支えられていた。

世間一般では当たり前の常識で、恐らく私も中学か高校で習っていたはずだけど、改めて官僚の立場から当時の状況を眺めると衝撃的だった。

何故なら、生まれた時からトヨタの城下町に住んでいた私には、トヨタは最初から「世界で活躍する大企業」であり、国の庇護のもとにあったなんて想像しづらいためだ。

 

<2つ目>

改めて、組織のマネジメント、そして人を育てることの難しさを感じた。

「改めて」というのは、部活に打ち込み毎日それらに頭を悩ませていた時期以来という意味。

ひたすら仕事に捧げ、国家のために身を滅ぼす勢いで働くことだけが正義ではない。ワーク・ライフ・バランスを大事にしながら、周りを冷静に観察する余裕を持つ人も組織には必要。そして、日本においても、だんだんと前者は時代遅れになりつつあり、後者の社会的な立ち位置は徐々に向上しているように感じる。

組織のマネジメントに関しては、両者を尊重し必要な場所に適切に配置する、適材適所を意識して取り組むことが大事だと思う。それが難しいのだけど…。

人を育てることに関しても、指導側の個人的な主義・主張はできるだけ排除し、中立的な立場で、組織の発展と対象者の性質をもとに見極め、良い所を伸ばす育て方することが大切だと思う。それが難しいのだけど…。

 

○まとめ

城山三郎さんの本は、今まで触れたことのなかった第1次世界大戦~高度経済成長期の日本人のあがきを描いており非常に新鮮だった。

他にも城山さんの本を読み、当時の日本と日本を取り巻く世界情勢への理解を深めていきたい。

(落日燃ゆと毎日が日曜日は購入した)