636の備忘録

備忘録 印象深い日々の出来事や、気付き等を記す

本の感想「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」

・あらすじ

1960年、ソ連プラハのインターナショナル小学校に通う筆者マリの同級生、3人の学生時代と筆者が成人した後に彼女たちの現在に会いに行った時の描写がされるエッセイである。

3人の同級生はギリシャ人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカと出身も思想も様々なのだが、皆親が共産主義の活動家であり、特権階級もしくはそれに付随する上流階級の家柄ということは共通している。

彼女たちが、ソ連vs中国や、欧州内の対立、またボスニア・ヘルツェゴビナの紛争に代表される民族戦争等に巻き込まれる中で、どのように生きてきたのか。マリは彼女たちを人を伝って探しだし、積もりに積もった話をする中で感じ取っていく。彼女たちの生き様は、マリにとって受け入れ難いものもあり、一方で深く同情し悲しみにくれるものもある。

例えばアーニャは国を捨て、イギリスの階級社会に溶け込んだ(溶け込もうとしていた)が、マリにとっては、何故ルーマニアの特権階級の特権を享受し続け、そのおかげでイギリスに渡ることのできた身にも関わらず、祖国ルーマニアで未だ生活に貧窮する一般庶民たちに思いを馳せないのか、分からず反感を覚える姿が描かれている。また、そのような社会を主導する立場の特権階級のみが、社会と隔絶した裕福な暮らしをしているルーマニア共産主義とは、如何なものか?悩み、その疑問を当人に伝えるも、アーニャと分かり合うことはできなかった。

一方で、ヤスミンカは紛争の真っ只中で生活し、人種差別によって職も変えざる得ない状況に置かれている。常に死の恐怖と隣合わせになりながら、家族との慎ましい生活に幸せを見出そうとしている。学生時代の聡明でイタズラっぽい瞳をしていたヤスミンカと今のヤスミンカの違いに打ちのめされるマリが描かれる。

 

・感想

ざっと読んでしまったので、この本は欧州に旅行行った時にでも、もう一度読み返そうと思う。

特に印象に残っている点は、彼女たちの母国への愛・執着である。

ギリシャがいかに美しい国なのか、一度もギリシャの空を見たことがないにも関わらず熱く語るリッツア。

「純粋なルーマニア人」であることに強いこだわりを見せるアーニャ。

学生時代からユーゴスラビア出身であることから周りの共産主義者から差別を受け、そのために校長と対立して自主退学してしまうヤスミンカ。

何故ここまで彼女たちの気持ちは強いのか、自分なりに考えた根拠は以下の通り。

母国で暮らしておらず、更にインターナショナル小学校で様々な国籍の人と暮らす、という環境…自分のアイディンティティを確立するために、母国への関心が高まるのは必然?

共産主義と資本主義が対立する社会情勢…日本は資本主義国家であり、基本的には日本と仲の良い国も資本主義なので、あまり共産主義思想に触れることがない。しかし冷戦終了までは共産主義と資本主義で世界の覇権争いが繰り広げられており、自分たちの立場について、「共産主義とは?良いところは?悪いところは?その上で私達の親や国が共産主義を肯定する根拠は??」等、考える機会が多かったのではないか?

・高度な教育を受けていたから…生徒たちは皆政治家や大使等の子息であり、先生も優秀な人達が教鞭を執っている。当然、教育のレベルも高度である。そういった高い知識・教養を持つ人間たちで構成される環境だったからこそ、小学生にも関わらず、自国への愛着心という高度な感情が醸成されたのではないか。

 

とつらつらと書いたけれど、実際に現地に行って、そこの人や空気に触れてみないと本当のところは分からない。こういう本を読むと、海外に旅行したくなるし、旅行に行った時の気付きが「楽しい」「綺麗」だけでなくて、もっともっと増えると思う。