本の感想「落日燃ゆ」
○あらすじ
終戦時に首相を担い、戦後の東京裁判でA級戦犯として絞首刑に処された、広田弘毅の生涯を描いた本。
広田家族の強い絆、広田の「自ら計らわず」の思想といった広田の描写はもちろん
日本が何故暴走し、開戦に至ってしまったかを軍部・政治家・官僚・天皇を取り巻く情勢と彼ら自身の生き方、また各国の大使の目線も含め描かれる。
作者は城山三郎で1927年生まれ。第二次世界大戦を経験。現在もご存命。
○感想
<1つ目>
幼稚な感想だけど、「登場人物が死にすぎる」ことが衝撃だった。
広田の母、息子は自殺。
広田の妻静子は、裁判中の夫を想い自殺する。
軍部内の統制がとれず、反乱分子が政治家を殺す。
広田自身も、いつ死んでもよい覚悟を決めたうえで外相に着任している。
他にも、あまりに人々が自殺。他殺されていく。直接的な戦禍による死でなく。
人が持つ 死への恐怖が時代によって大小することは無いだろうに、何故そんなに死への躊躇いが無いのか、不思議に思いながら読み進めていた。
<2つ目>
日本は無宗教と言われるけど、戦時下の日本は「日本万歳教」信徒による宗教国家だったのではないかと思われるほど
非合理的、非人道的な行動をとっていることに驚いた。
もちろん、歴史はそれを紡ぐ人の思想を反映して編集されているので、この本に書かれている有様が事実そのものではないと分かっているし
特に敗戦国の日本を肯定する向きの歴史は戦勝国によって淘汰されると思うけれど
それにしても、本の中で描かれた、世界に向けて日本のとった行動は異常に映った。
現在の日本は、逆に”「日本国民」であることに誇りを持っているなんて恥ずかしい”というような、
日本のことは好きだけど、別に「国家のために」とか「(日本人として)私は…」といった国家への意識が高い考えは持っていない、という人が大半だと思う。
この違いは、国力の向上とともに生活水準が上がり、豊かな暮らしが実現され、他国との競争を一般市民が意識しなくてもよくなったからだろうか。いわゆる平和ボケ…?
もしくは、GHQの教育改革によって子どもへの教育内容が変わったため、私たちの思想も変化したからだろうか。
全然知識が足りていないため、推測しても恐らく的外れなことしか検討できない…
この疑問は別の書籍読み、解決のヒントを得たい。