本の感想「官僚たちの夏」
○本との出会い
バイト先のカフェのオーナーに著者の城山三郎さんの本を勧められ、たまたまカフェの本棚に2冊も同じ本があったため、お借りすることができた。
やけに城山三郎さんを推すなと思って著者紹介に目を通したら、オーナーと同じ一橋大出身だった。オーナーの愛校心はものすごく強い。やっぱりな…
○本の内容
通産省に務める官僚たちの働きざまを、作品中次官にまで上り詰める主人公・風越シンゴを中心に描く。
登場人物の仕事に対する意識のぶつかり合いや、同僚や大臣、財界等周りとの駆け引きなど詳細に見ることができ、
高度経済成長期における日本を支え導こうとするリーダーたちの思いに少し触れることができる。
○感想
<1つ目>
この本の本旨からはズレるけれど、日本の自動車産業の保護貿易について知れた、よい機会であったと思う。
競争力をもたない日本の自動車産業が今や世界のトップに君臨するまでには、諸外国からの批判を浴びながらも交渉を重ね、自由化から防ぎ、産業を成長させた立役者たちに支えられていた。
世間一般では当たり前の常識で、恐らく私も中学か高校で習っていたはずだけど、改めて官僚の立場から当時の状況を眺めると衝撃的だった。
何故なら、生まれた時からトヨタの城下町に住んでいた私には、トヨタは最初から「世界で活躍する大企業」であり、国の庇護のもとにあったなんて想像しづらいためだ。
<2つ目>
改めて、組織のマネジメント、そして人を育てることの難しさを感じた。
「改めて」というのは、部活に打ち込み毎日それらに頭を悩ませていた時期以来という意味。
ひたすら仕事に捧げ、国家のために身を滅ぼす勢いで働くことだけが正義ではない。ワーク・ライフ・バランスを大事にしながら、周りを冷静に観察する余裕を持つ人も組織には必要。そして、日本においても、だんだんと前者は時代遅れになりつつあり、後者の社会的な立ち位置は徐々に向上しているように感じる。
組織のマネジメントに関しては、両者を尊重し必要な場所に適切に配置する、適材適所を意識して取り組むことが大事だと思う。それが難しいのだけど…。
人を育てることに関しても、指導側の個人的な主義・主張はできるだけ排除し、中立的な立場で、組織の発展と対象者の性質をもとに見極め、良い所を伸ばす育て方することが大切だと思う。それが難しいのだけど…。
○まとめ
城山三郎さんの本は、今まで触れたことのなかった第1次世界大戦~高度経済成長期の日本人のあがきを描いており非常に新鮮だった。
他にも城山さんの本を読み、当時の日本と日本を取り巻く世界情勢への理解を深めていきたい。
(落日燃ゆと毎日が日曜日は購入した)